しごとについての質問
「科学者や研究者になれたらいいな。研究する仕事ってどんな感じなんでしょうか?」(13歳・男子)
児玉ひろ美(こだまひろみ)さん
*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団
「感じること」が大切だと説いている研究者がいます
『センス・オブ・ワンダー』
著者:レイチェル・カーソン
訳:上遠恵子
写真:森本二太郎
出版社:新潮社
価格:1400円(税別)
科学者や研究者を目標にしているあなたは、調べることや、考えることが好きなのでしょう。だとしたら、近年のインターネットがもたらす世界は、大きな翼を手に入れたようなものですね。なにしろ自宅に居ながらにして、世界中の文献や最新の情報が瞬時に手に入ったり、世界中の図書館にアクセスできたりするのですから。本当に便利な世の中になりました。
でも、『沈黙の春』(1962)で環境破壊に警鐘を鳴らし、大きな反響を呼んだレイチェル・カーソン(米国の海洋生物学者・作家、1964没)は、著書『センス・オブ・ワンダー』のなかで、「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない(It is not half so important to know as to feel)」と説いています。
つまり、調べること、考えることの以前に、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」=「神秘さや不思議さに目を見はる感性」で、感じることこそが大切なのだと説いているのです。「感じること」こそが、研究者への一歩なのかもしれません。
大学の研究室以外にも科学者の視線を持つ人はいます
『未来のだるまちゃんへ』
著者:かこさとし
出版社:文藝春秋
価格:660円(税別)
2019年、吉野彰さんのノーベル化学賞受賞は、日本中の現場(大学の研究室ではなく)で働く科学者や研究者たちに、大きな喜びや希望をもたらしました。『だるまちゃんとてんぐちゃん』『からすのパンやさん』の作家、かこさとしさんも、絵本作家になる前は昭和電工という民間企業に勤めて研究を重ねる、そんなおひとりでした。
『未来のだるまちゃんへ』は、19歳で敗戦を迎え、態度をがらりと変えた大人に失望したというかこさんの自叙伝です。子どもたちの役に立ちたいと始めた活動のこと、ライフワークである「子どもの伝承遊び」調査のこと、サラリーマン研究者と作家の二足のわらじを履いた生活や、作品に込めた願いのこと。さらにご自分の子育て、東日本大震災と原発問題などにも言及をしています。
そこには科学者としての視線を曇らせることなく絵本を描き、常に子どもたちの未来を見つめてきた日々がつづられています。いつどこにいても、何をしていても、科学者イコール研究心を失わない人なのですね。