しごとについての質問
「お父さんは、会社に入ったら最初は営業だったんだって。『営業』って何をするの?」(13歳・女子)
中山治美(なかやまはるみ)さん
営業のことは、日本で一番有名な営業マンに教えていただきましょう
『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』
監督:本木克英
出演:西田敏行、三國連太郎、鈴木京香、小澤征悦
DVD発売・販売元:松竹
©2002 松竹株式会社
『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:マイケル・キートン、ローラ・ダーン
DVD&Blu-ray発売元・販売元:株式会社KADOKAWA
© 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
『釣りバカ日誌』シリーズのハマちゃんこと浜崎(ハマザキじゃなく、ハマサキね!)伝助です。えっ? 仕事そっちのけで釣り三昧の、ゆる過ぎる大人から!?って、思ったでしょ。これが実に奥が深い。
まず「営業」とは、会社や事業の利益になることを目的に、顧客や企業との折衝を行う業務です。ハマちゃんは鈴木建設の営業三課の所属。シリーズ15作『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』(2002)では、ハマちゃんが契約を取ってきた、富山の老舗製薬会社・天狗堂が手掛ける美術館建設でトラブルが発生するところから物語が始まります。富山では実際に、富山県美術館が2017年に完成しました。総工費は約85億円。劇中の天狗堂のプロジェクトも同程度と思われますから、ハマちゃんは実に大きな利益を鈴木建設にもたらしたと言えるでしょう。優秀ですね。
ではどうやってビッグプロジェクトを手にしたか。
公共事業であれば、公平性を保つために、企画競争を行って発注する会社を選びます。しかし本作の美術館建設は、一企業の事業です。NHK紅白歌合戦でシンガー・ソングライターの米津玄師が「Lemon」を歌ったことで知られる大塚国際美術館(徳島県鳴門市)が、大塚製薬を擁する大塚グループによって設立されたのと同じです。ハマちゃんは天狗堂の会長から直接、美術館建設の受注を受けています。お得意の釣り人脈を使って。
そもそもハマちゃんが、自分の会社の社長をスーさん(三國連太郎)と呼ぶ程の仲になったのも、釣りがきっかけでした。そこにハマちゃんの何らかの野望があったようには思えませんが、趣味をきっかけに相手との距離を縮めて、懐に飛び込むという〝人たらし″ぶり……、もとい営業スキルはなかなかのものです。実際、鈴木建設も、ハマちゃんの能力と実績を認めていて、たとえ会社に遅刻しようが、就業中に釣り道具を手入れしていようが、クビにすることはありません。おかげで同シリーズは1988年から2009年の間に、22作も製作されています。
もし、あなたのお父さんが仕事と称してゴルフへ行ったり、赤ら顔で酒のにおいをプンプンさせながら帰宅しても、ハマちゃんの釣り交流と同じことをしているんだなぁと、温かい目で見守ってあげてください。
もう1作紹介するのは、おなじみマクドナルドの創業者レイ・クロックの人生を描いた『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』です。
米国出身の彼は、第一次世界大戦後、ピアニストなど様々な職業に就いていました。転機が訪れたのは、5つのミルクセーキを同時に作る機械「マルチミキサー」の営業マンとして全米各地を回っていた時。売り込み先の一つが、カリフォルニアのマクドナルド兄弟が営むハンバーガー店で、システム化された調理方法とサービスに興味を抱き、フランチャイズ化を思いつきます。その後、世界規模のチェーン店にするための強引かつ巧妙なビジネスの仕方には賛否ありますが、目の付けどころがいい! それも営業マンとして様々な店を巡っていなければ、気付かない発想です。
ハマちゃんとレイ・クロックは一見、真逆。でも、いざとなった時の行動が速くて大胆。営業の仕事は、ボーッと生きてちゃダメですね。