しごとについての質問
子どものころなりたかった仕事に就けている人はどのくらいいるの?(12歳・男子)
<答えてくれる人>清水克衛(しみず かつよし)さん
恵まれた時代から、戦争の時代を考えてみたい
『おなあちゃん-三月十日を忘れない』
著者:多田乃なおこ
出版社:冨山房
価格:1400円(税別)
「なりたかった仕事に就けている人」を問う前に、是非この本を読んでいただきたいと願います。
戦争中、昭和20(1945)年3月10日「東京大空襲」を体験した14歳の少女の物語です。「木造家屋のひしめく下町に、この夜、アメリカ軍のB29爆撃機が三百機以上の群れをなしてあらわれ、低空から無数の焼夷弾を落としたのです。焼夷弾からとび散った油に火が燃えうつり、折からの乾いた強風にあおられて、たちまち家も人も炎の渦にのまれました。あまりの火勢のために酸素がうばわれ、息もできなくなったといいます。この夜、東京のおよそ三分の一が焼失し、その犠牲者の数は八万人とも十万人ともいわれています」。
私たちはこのような事実があったことを忘れがちなような気がします。
今は冷暖房完備の部屋に住み、蛇口をひねれば水が出て、おなかがすいても飢えることはありません。それゆえ、本当は「有り難いこと」を「当たり前なこと」と勘違いしてはいないでしょうか。
仕事とは、それをすることで誰かが喜んでくれること
『竜退治の騎士になる方法』
著者:岡田淳/著・絵
出版社:偕成社
価格:1000円(税別)
この世の中には、「縁」という不思議なモノが存在しています。「縁」というのは「出会い」と言ってもいいかもしれません。
みんなが憧れる職業に、プロスポーツ選手やアイドルなどがあるのかもしれませんが、それらの仕事をしている人たちは、皆、そういう縁があってなっているのです。たまたま親から受け継いだ「縁」で運動神経が優れているとか、歌が上手だとか。その優れたことや上手なことというのは、人それぞれが違う優れたモノを必ず持っていて、それは「縁」という不思議なモノで生かされていきます。
私自身もたまたま読書の大切さを教えてくださった先生がいて、今の仕事をしています。
ただ勘違いしてはいけないことは、仕事とは自分がなりたいというものではなく、誰かがそれをすることで喜んでくれたり、「ありがとう」って言われること。それは本来自分ではわからないものなのです。この本は、そんなことを教えてくれるのだと思います。