宇宙を24時間365日見張り?あのひと、何してる?

2019.08.28 あのひと何してる?

フライトディレクタ

国際宇宙ステーション(ISS)は、宇宙に浮かぶ実験や研究を行う施設。日本実験棟の名前は「きぼう」だ。地上の筑波宇宙センターには、「きぼう」のシステムを監視・制御する運用管制室があり、フライトディレクタはそのリーダーをしているよ。写真提供/©JAXA

NASAや宇宙飛行士と交信。緊張の糸が張り詰めた現場


「きぼう」の運用管制室では、
・電力や通信などを担当するCANSEI(カンセイ)
・熱や環境管理を行うFLAT(フラット)
・宇宙飛行士との交信を行うJ-COM(ジェイ-コム)
・宇宙飛行士の活動を含めた「きぼう」の運用に関するスケジュール管理を行うJ-PLAN(ジェイ-プラン)
・地上側の機器の管理を行うTSUKUBA GC(ツクバジーシー)など、
さまざまな役割を持つ運用管制員がチームを組み、1日3交代制、24時間365日の体制で働いています。


約120名いる運用管制員のうち、フライトディレクタは現在12名います。運用管制員をとりまとめ、宇宙で作業する宇宙飛行士の動向に気を配り、米航空宇宙局(NASA)との交渉も行うのが仕事です。

フライトディレクタは、常に8個のモニター画面を注視し、宇宙飛行士の作業状況や「きぼう」の現在の状況などを確認。同時に、ヘッドフォンから、宇宙飛行士や地上の管制室間で交わされる、最大16回線の交信を聞き分けて的確に指示を出すため、シフト中は緊張の糸を切らすことができません。

運用管制室の中で作業しながら食事をし、トイレへ行くのもISSと通信ができなくなる5~10分ほどの間にすませる忙しさ。宇宙飛行士から「暑い、寒い」というリクエストがあれば、空調の管理もすぐに行います。

また、宇宙飛行士の訓練に立ち会うことも重要な仕事。訓練を見ながらその宇宙飛行士の個性を把握し、宇宙へ飛び立った際、地上から的確に指示をするための参考にします。

宇宙飛行士は、半年程度ISSで実験活動などを行います。フライトディレクタの判断には人命がかかっていると肝に銘じながら、重い責任と向き合う日々です。

フライトディレクタには、どうしたらなれるの?


衛星の追跡管制業務、ロケットの打ち上げ管制業務や「きぼう」に関する開発・運用管制業務を、数年経験した人の中から選ばれます。ISSや「きぼう」、実験装置に関する技術的知識、ISS運用のルールやプロセスを習得し、緊急事態発生時のシミュレーション訓練など数年間の養成期間を経て、年に1~2名のフライトディレクタが誕生します。

協調性、プレッシャーに強いなど、人間性も重要。英語力も必須です。

協力/JAXA(宇宙航空研究開発機構)広報部
取材・文/内藤綾子