周りが「適当」に見えて仕方がない? そんな時は…

2019.08.28 おしごとBOOK

しごとについての質問

親や先生は「あ、やっとくね」と言っていながら、やっていないことが多い。仕事って、そうやって適当でいいんですか?(16歳・女子)

<答えてくれる人>清水克衛(しみずかつよし)さん

書店「読書のすすめ」代表、逆のものさし講主宰、NPO法人読書普及協会顧問。1995年に東京都江戸川区篠崎町で書店「読書のすすめ」を開業。著書に、『非常識な読書のすすめ』(現代書林)、『逆のものさし思考』(エイチエス)など多数。

他人のことなどどうでもいい。自分の生き様を残そう


『デンマルク国の話 ほか』
著者:内村鑑三
出版社:教育出版
価格:800円(税別)

仕事って適当でも一所懸命でもどちらでもいいと思います。どちらであっても、それは必ず結果として現れます。仕事一般に言えることですが、他人のことなどどうでもいいことです。自分がどうするかです。

『デンマルク国の話 ほか』の著者、内村鑑三が、明治27(1894)年に若者たちを前に「後世への最大遺物」というテーマで話をしました。君は未来の人たちのために何を残すべきか。彼は一番目にお金もうけをしなさいと言います。うんともうけてそのお金で未来の人に喜んでもらえる、例えば美術館などを建てなさい。次に、事業をしなさい。トンネルを掘ったり橋をかけたり。それらができないなら、本を書きなさい。それもできなきゃ生き様を残そう! と語っています。仕事とは、どれだけ人に喜んでもらえるかです。自分自身が適当に仕事をやれば、当然人に喜んではもらえませんね。人に喜んでもらえることで自分がうれしい。そうなってくると仕事は本当に楽しくてしかたがないものになりますよ。

やがて人のいろいろな事情や悲しみを感じ取れるようになるよ


『跡を消す 特殊清掃専門会社デットモーニング』
著者:前川ほまれ
出版社:ポプラ社
価格:1600円(税別)

『跡を消す』は、気ままなフリーター生活を送る浅井航という若者が主人公の物語です。彼の仕事観は、「食べるために働く」というものでした。しかし、ひょんなことから知り合った笹川啓介の会社 「デッドモーニング」で働くことになります。 そこの仕事とは、孤立死や自殺など、わけありの死に方をした人たちの部屋を片付ける、特殊清掃専門の会社だったのです。近頃は、つらい仕事、汚い仕事は誰もやりたがらないようですが、そういう仕事をする人がいなければ社会は成り立ちません。主人公の浅井も、はじめはいやいや仕事に取り組みます。しかも適当にです。

しかし、人の生き死にに関わる仕事ですから、だんだんと真剣になっていくのです。誰もが、死にたくて死んだのではない。いろいろな事情があって、その悲しみを感じ取れるようになったとき、仕事に誇りが芽生え、適当にやるなんてとてもできないことを悟っていきます。「働くために食べる」と、考え方が逆転するのです。