口調も見た目もチャラい人、社会人として大丈夫?

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

ニュースで見たけれど、新入社員なのに敬語を使えない、茶髪の人がいる。あれで働いていけるの?(12歳・女子)

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

おっしゃることはごもっとも。ただし、人は見かけにあらず


『キューティ・ブロンド』
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
価格:Blu-ray 2381円(税別)
(C)2011 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『何者』
発売・販売元:東宝株式会社
価格:DVD通常版 3800円(税別)
原作:朝井リョウ『何者』(新潮文庫刊)
©2016 映画「何者」製作委員会

気になりましたか? うれしいですねぇ。茶髪の先っぽを指でくるくるもてあそびながら「ヤバイ」とか「〜じゃん」を連発する若者に眉をひそめているのは、筆者のようなおばちゃんたちだけかと思っていました。その新入社員たちも、自分たちよりはるか年下の世代に心配されていることを知ったら、恥ずかしくなって襟を正すかもしれませんね。

確かに言葉遣いやファッションは、その人の内面を表していると言えます。一方で、昨今の政治家や官僚が起こす私利私欲にかられた不祥事を目にしていると、人を見た目で判断してはいけないということにも気づかされるでしょう。

そんな見た目と中身のギャップをコミカルに描きながら、「偏見を持って相手に接すると本質が見えてこない」という、大切なことを教えてくれる映画があります。ミュージカルにもなった、リーズ・ウィザースプーン主演『キューティ・ブロンド』。今どきギャルが、彼氏にフラれて一念発起! 猛勉強して名門ハーバード大学のロー・スクールに進学し、弁護士を目指すコメディーです。

タイトルにもなっているブロンド・ヘアは、セクシー女優のマリリン・モンローが活躍した時代から米国では"おバカさん"というイメージがあります。そのためにハリウッド女優の中には、わざわざきれいなブロンド・ヘアを染めている人もいるほどです。リーズ演じるエルは、ブロンド・ヘアに加え、お嬢様育ちで派手な高級ブランドを身につけていることから、お堅いロー・スクールでは浮きまくりで、からかいの対象となります。でも彼女には内面の美しさという武器がありました。偏見なく誰とでも親しくなれる純粋な心に、困っている人に手を差し伸べたいと思う正義感、そして自分を見下した相手に対して実力で見返してやろうとするガッツです。それらの長所や能力を生かしながら、軽やかに法曹界で活躍する姿は実に爽快です。

私たちの周りにも、ギャルだけど起業をしているとか、チャラいけど介護の現場で力になっているとか、見渡せばエルのように自分のスタイルは変えずに、仕事にいそしんでいる人が増えているように思います。

ただ、社会に一歩出るというのは、今までの学校という狭い世界から、付き合う相手も行動範囲も一気に広がりますのでTPO(time=時、place=場所、occasion=場合)に応じたファッションや言葉が求められます。しかも日本は今、新卒重視の時代。就職活動の時点でこれらを身につけていないと、希望する企業にも入れません。そんな就職活動の過酷さを描いた『何者』という映画もあります。映画の中では腹の探り合いという人間のこずるい部分も描かれていますが、入社試験のわずかな時間で自分という人間が判断され、その後の人生が変わるのですから、皆が必死になるのは当然です。

社会に出て人と触れるということは、良くも悪くも人間が磨かれていきます。あなたが目にした新入社員はどうやら磨かれがいのある人のようなので、きっと今頃、先輩たちにゴシゴシ鍛えられていると思いますよ。そしてあなたのように流行や周囲に流されず、そこに疑問を抱くというのは、確固たる個を持った方だとお見受けします。どうぞその感性を育んでください。