相性バッチリの恋人のような仕事、どうやって出会う?

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

どんな仕事が自分に合うのかわかりません。みんなどうやって見つけるの?(15歳・男子)

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

少しでも興味がある仕事だったら、チャレンジしてみてはいかがでしょう?


『WOOD JOB!~ 神去なあなあ日常~』
発売元:TBSテレビ
販売元:東宝
価格:DVD 3800円(税別)

『RAILWAYS  49歳で電車の運転士になった男の物語』
発売・販売元:松竹
価格:DVD(2枚組) 3800円(税別)
©2010「RAILWAYS」製作委員会

これは恋に例えたら、納得できるかもしれません。いわゆる“相性”というものは付き合ってみなければわかりませんよね? ですので、少しでも興味がある仕事だったら飛び込んで、相性を確かめてみてはいかがでしょう。
意図せずにそれを実行したのが、林業をテーマにした映画『WOOD JOB! ~ 神去なあなあ日常~ 』の主人公・勇気(染谷将太)です。彼が林業に興味を示した動機は、極めて不純です。大学受験に失敗し、彼女にもフラれて意気消沈していた時、ふと目にしたパンフレットの美女・直紀(長澤まさみ)に一目ぼれ。彼女との出会いを期待し、パンフレットに書かれていた林業研修プログラムに参加します。そこは携帯電話も通じないような山村で、おまけに直紀は林業とは関係なく、単なる村民の一人。蛇や猪と遭遇する豊か過ぎる自然と、野性味あふれる林業の男たちに囲まれてのワイルドな生活に勇気はドン引きし、村からの逃走を図ります。

でも直紀に考えの甘さを指摘された悔しさと、村人たちの優しさ、何より自然と対峙(たいじ)しながら何十年、何百年も先の地球を考えて木を育てている崇高な仕事に触れ、林業に就くことも悪くないかも? と考えが変わっていきます。最後には不自由に感じた村の暮らしを楽しむようになったのだから、勇気にとってはこの場所や仕事との相性が良かったのでしょう。

そんな若い時に天職が見つかった(?)勇気とは対照的に、紆余曲折を経て運命の仕事にたどり着いた人もいます。『RAILWAYS  49歳で電車の運転士になった男の物語』は、故郷に住む母親が病気で倒れたのをきっかけに一流企業を退社し、子どもの頃の夢だった地元を走るローカル線の運転士になった筒井肇(中井貴一)の物語です。

舞台となっているのは“バタデン”の愛称で知られる島根の一畑電車ですが、実際に千葉のいすみ鉄道は年齢制限を設けず、訓練費用自己負担(700万円!)で運転士を募集、40歳を過ぎて採用された方もいたそうです。(2016年に終了)

一つの企業なり、一つの仕事を全うするのも素晴らしいですが、生活状況の変化や、自身のスキルアップや夢のために、転職もありという日本人の意識の変化も、この映画は表しているといえるでしょう。また本作では、志半ばで亡くなった肇の同僚(遠藤憲一)や、野球選手を目指していたが故障をして肇と同じ新人運転士になった大吾(三浦貴大)のエピソードも盛り込まれており、人生とはままならないことを痛感させてくれます。ならば余計に、これだ! と思った仕事にチャレンジしなければ人生もったいないですよね。

ちなみに筆者はもう20年以上記者をしていますが、いまだに自分に向いているのかどうかわかりません。むしろ、他に自分の可能性を試せる場所があるのかも? と、自分の伸びしろを信じています。中国の思想家・孔子は「四十にして惑わず」と言いましたが、40歳を過ぎて惑っている人物もいますので安心してください。