お囃子(はやし)
寄席の舞台袖からは、さまざまな音楽が聞こえてくる。これは「寄席囃子」といって、舞台袖から落語家の様子を見ながら生演奏で高座を盛り上げているんだ。演奏者は、周囲から「お囃子さん」と呼ばれているよ。(写真提供/一般社団法人落語協会、撮影場所/黒門亭)
噺家(はなしか)の呼吸に合わせて演奏。心情や風景を表現する
落語協会には、女性のお囃子が15名所属しています。都内にある寄席(鈴本演芸場、末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場、黒門亭)など、毎日開かれている寄席で働いています。
寄席は昼・夜の2部制で、どちらかに出演。お囃子は1日に1~3名配置され、主に三味線を演奏し、笛や太鼓は前座の落語家が担当します。
師匠たちが高座に上がるとき演奏される「出囃子」は、特に重要な仕事。
林家はやしや木久扇きくおうさんは『宮さん宮さん』というように、落語家の師匠には決まった出囃子があります。
出囃子を聞いただけで、お客さんから「待ってました! 木久扇!」といったかけ声とともに拍手がわき起こり、ワクワク感は最高潮に達するのです。
「はめもの」が入る噺では、三味線や太鼓などで強弱をつけ、登場人物の心情や風景、幽霊が出るときの様子までを表現しながら、観客のイメージをかきたてます。
とはいえ、噺の間に絶妙なタイミングで演奏する「はめもの」は特に難しく、ときにはハプニングが起こることも。
お囃子が、雪を表現する「はめもの」のタイミングが分からないとき、高座の師匠が「そろそろ、雪が降ってきます」というセリフで、助けてくれることがあったそうです。
寄席は、落語のほかに曲芸や奇術、紙切りなどがあり、それぞれのBGMもお囃子が担当。紙切りでお客さんが「アニメのキャラクターを切って」と言えば、即興でそのアニメソングを弾くこともあります。
曲のレパートリーは100曲以上あり、民謡、アニメ、歌謡曲、クラシックなど、音楽の分野も幅広く身につけるため、日々の勉強は欠かせません。
お囃子は、どんな人がやっているのかな?
日本芸術文化振興会に養成所があり、45歳までに試験を受けて合格したのち、2年間の研修を受けます。長唄、三味線、小唄、作法など、養成所で学ぶことは多彩です。