ひたすらひよこを見つめるあのひと、何してる?

2019.08.29 あのひと何してる?

ひよこ鑑別士

生まれたばかりのひよこを、左右の箱に分けている光景を見たことがあるかな。それを仕事にしているのがひよこ鑑別師で、正式には「初生雛(しょせいひな)鑑別師」というよ。写真は、年1回開かれる「全日本初生雛雌雄鑑別選手権大会」という技術競技会の様子。単純作業に見えるけれど、実際はどうなんだろう。(写真提供/公益社団法人 畜産技術協会)

指先の感覚で瞬時にオス・メスを分ける作業は、時間との勝負


ひよこ鑑別師が養成所を経て所属しているのが、日本で唯一の畜産技術協会です。協会の登録鑑別師は約180名で、男女比は約8:2。ただし、近年、鑑別師を希望する人の男女比はほぼ5:5となっています。日本在住のひよこ鑑別師は110名、海外在住の鑑別師は70名います。

ひよこ鑑別師は生まれたばかりのひよこの生殖突起を見て、オス・メスに分ける専門職です。扱うのはニワトリだけと思われがちですが、うずら、アヒル、七面鳥、ダチョウなども鑑別します。

なぜ、オス・メスを分ける必要があるのでしょう。卵用のニワトリはメスのみが採卵用として育てられ、また、肉用のニワトリはオスとメスを分けて飼育されるからです。

鑑別は孵化(ふか)場で行います。白衣に着替えて防疫の支度をして、あとはひたすらオスとメスに分ける作業に没頭。生殖器は本当に小さいので、指を使ってひよこの肛門付近を触り、生殖突起の有無を瞬時に確かめるには、指先の研ぎ澄まされた繊細な感覚が必要です。

孵化したひよこは時間がたつほど見分けにくくなるので、5分で100羽、1時間に1200羽を目標に、スピードが勝負。孵化して間もないひよこは弱く、①指に固定して②糞を絞り③肛門を開いて鑑別し④オス・メスの箱に分けるという4つの行程を、傷つけずにより多く鑑別する手際のよさや、集中力と注意力も求められます。

現在は、日本国内で就業することが難しい状況になりつつあり、北欧やヨーロッパ諸国、オーストラリア、ニュージーランド、ロシアなど、ニーズが高い海外での仕事が中心です。

ひよこ鑑別師には、どうしたらなれるの?


畜産技術協会の初生雛鑑別師養成所に入所(満25歳以下)して、修了後は研修生として孵化場で学びます。予備考査・高等考査に合格して資格を取得。協会からの派遣要請を受け、その派遣先と契約を結んだらプロの鑑別師としてスタートします。

協力/公益社団法人 畜産技術協会
取材・文/内藤綾子