釘を使わずに材木を組み立てるあのひと、何してる?

2019.08.28 あのひと何してる?

宮大工(みやだいく)

日本には、数百年以上の長い歴史を誇る文化財が数多くあるね。そんな文化財の修復や建築などを専門に行っているのが宮大工だ。写真は、香川県の法然寺五重塔で肘木(ひじき)の取り付けをしている様子だよ。普通の「大工さん」とどう違うのかな?(写真提供/金剛組)

数百年、数千年先も残る仕事が誇り


一般的な大工は人の住む家を造りますが、宮大工は、神社仏閣が専門です。普通の家と神社仏閣の大きな違いは、屋根の形。上向きの曲線で、鳥が飛び立つ瞬間の翼をイメージしています。神さまや仏さまをお祀りするための空間ですから、豪華絢爛(けんらん)な飾り物や彫刻で荘厳な雰囲気を出しているのも特徴的です。また、寺の本堂は災害時の避難場所として昔から使われていたので、普通の家よりも丈夫な造りになっています。

神社仏閣は、「木組み」という工法で造られています。木組みとは、古来より日本の職人たちによって受け継がれてきた伝統工法で、釘や金物(ちょうつがい、掛け金など)を使わず、木材自体に切り込みなどを入れてパズルのようにはめ合わせて建物の骨組みを造る方法です。木組み加工も宮大工の仕事。木の性質を読み、接合する所に刻みを入れて継手(つぎて、材を継ぎ足す)・仕口(しぐち、材をある角度に接合する)といった技を施すことで、変形や衝撃、揺れにも耐えられる抜群の強度を生み出します。

世界最古の木造建築として名高い奈良県の法隆寺も、宮大工が定期的に修理をしています。貴重な文化財は、創建当時の形態や寸法を維持保存することが使命。朽ちた部材も、木組み工法によって解体して交換補修しながら、できるだけ古材を残しています。

日本各地の本堂や社殿は、宮大工の技術によって、数百年、数千年と地球上に存在することが可能です。手がけた仕事が、千年というスケールで残ることが誇りです。

どうしたら宮大工になれるの?


神社仏閣の建築を手がける工務店に就職し、棟梁のもとで弟子として見習いから修行を始めます。18歳以上、工業高校卒業以上が求められ、修行期間は最低5年必要です。見習いのうちは、現場の掃除や道具の研磨、材料運びといった雑用が主な仕事に。習得すべき技術や知識は現場で培います。

協力/金剛組
取材・文/内藤綾子