映画監督のそばにいつもいるあのひと、何してる?

2019.08.28 あのひと何してる?

映画スクリプター

ここは、映画『いぬやしき』の撮影現場。ストップウオッチを片手に台本をにらみ、監督の横にぴったりと貼りついているのが映画スクリプターだ。監督をきめ細やかにサポートする注意力と気配りが必要なため女性が多く、監督の「秘書」「女房役」とも言われているんだって。(写真提供/田口良子さん)

撮影内容を記録。監督とスタッフの橋渡し役にも


映画スクリプターは、準備、撮影から完成まですべての工程に携わり、撮影した内容を細かく記録します。

準備では、完成したら何時間の映画になるか計算し、打ち合わせにも参加して、どのような映画になるのかイメージを膨らませます。

撮影になると、シーン1から順番に撮ることはなく、初日にラストシーンを撮ることもあります。ひとつのシーンで、「表情のアップ」「全身」など、さまざまなカットを撮影するため、「何を」「どの順番で」撮影したのかを記録。撮ったカットをどのように編集するのかを編集技師へ伝えるために台本に書き込みをします。同時に、衣装を間違えていないか、ドアは開いていたかなど、前後のカットが違和感なくつながるように細心の注意を払って観察するのも仕事のひとつです。

現場では、監督や俳優、スタッフに意見することも日常茶飯事で、場を和ませるのも仕事のうち。カットがかかった際、監督とうなずき合うときは、言葉がなくてもわかり合える瞬間です。

編集作業になると、必要なら、「このカットを使ってみては」と提案することも。編集、ダビング(音のついていない映像に、セリフ、音楽、効果音などを入れる作業)を経て、元の脚本から変わったシーンやセリフを整理し、音楽がかかる部分を書き込み、完成台本を作って仕事は終わります。完成台本は、字幕制作に使用されます。ひとつの作品はに携わるの約4カ月が平均的な期間。VFX(特撮など)の多い作品では1年以上携わることもあります。

どうしたら映画スクリプターになれるの?


特別な資格や学歴は必要ありませんが、この仕事に就く道筋は確立していません。現役の映画スクリプターの見習いについて仕事を学ぶことが理想ですが、狭き門なのが現状。映画やテレビの制作会社に入って他のパートからスタートし、見習いにつなげるのがひとつの手立てになることも。

協力/田口良子さん
取材・文/内藤綾子