ピアノをバラバラにしているあのひと、何してる?

2019.08.28 あのひと何してる?

ピアノ調律師

ピアノは、ささやくそよ風のようなピアニシモから、吹き荒れる嵐のようなフォルテシモまで、多彩な音色で曲を豊かに奏でる楽器の王様だ。そんなピアノを扱うピアノ調律師は全国に1万人くらい存在し、10代後半~80代まで年齢層は幅広いんだって。(写真提供/一般社団法人 日本ピアノ調律師協会)

微妙な音の違いを聞きわけ、演奏者にとっての「いい音」を探す


ギターなどの弦楽器と同様に、ピアノの内部には弦が張られています。弦は1本80-90キロの張力(引っ張る力)で、88個ある鍵盤それぞれに1~3本張られている構造。弦の総数は約220本あり、16-20トンもの張力が常にかかっています。わずかな弦の緩みが音の乱れにつながるため、定期的な調律が必要です。                 

                                

ピアノ調律師の仕事を大きくわけると、弦の張力を微調整して音を合わせる「調律」、鍵盤の動きのなめらかさや高さなどをそろえる「整調」、弦を叩くハンマーフェルトの形や音の硬さを調整する「整音」、消耗した部品を補修・交換したりする「修理」があります。    

                                

ピアノ調律師は黙々とピアノに向かって作業をするイメージがありますが、演奏者と話すことがとても大切です。特にプロの演奏者は「自分の音」を求めます。たとえば「明るい音にして」と言われたときは、試しに音を変えて意見を聞くなどしてコミュニケーションをとりながら、演奏者の求める「明るい音」を見つけます。

                                

ひとつの音、たとえば「ド」の中に、実は周波数の違ういろいろな高さの音が混ざっています(倍音)。1音ごとの倍音の混ざり方が音の印象を決定するので、倍音を聴きわける聴力と技術を磨いていないと、求められた音を見つけることはできません。演奏者にとっての「いい音が出る」「弾きやすい」ピアノにするのが調律の難しさであり、面白さです。

どうしたらピアノ調律師になれるの?


養成所や調律技術専門学校を卒業し、ピアノメーカーや販売会社、調律専門会社に就職するのが一般的です。または、未経験な状態から会社・工房で研修を積んだのちにピアノ調律師になることも。多くの会社は、高校卒業以上の学歴と年齢が条件です。「ピアノ調律技能士」という国家資格を持っていれば有利。ピアノを弾くことができなくても調律はできるようになりますが、弾けることで役に立つことは大いにあります。

協力/一般社団法人 日本ピアノ調律師協会
取材・文/内藤綾子