洗い張り職人
「洗い張り」とは、着物を洗う方法のこと。着物の縫い目の糸をすべてほどいて、袖や身頃などのパーツに分けてから仮縫いし、1枚の布(反物・たんもの)に戻して水洗いをするんだ。「着物の状態で戻って来ないの!?」なんて驚いたかな。かつては各家庭で着物を洗い張りし、別の着物に仕立て直すほか、座布団などにリサイクルしてたんだって。物を大切にする先人の知恵だね。(写真提供/だるまや京染本店)
着物を水洗いして風合いと光沢をよみがえらせる
洗い張りを依頼するのは、茶道や日本舞踊など着物文化に携わる人、趣味で着物を着る人、振り袖を娘の寸法に仕立て直したい人などさまざまです。
お客さまから預かった着物には、襟の汗やファンデーション、食べこぼし、袖口の皮脂、裾のドロといった汚れが付着しています。依頼された業者は、縫い目を残さずほどいて、バラバラになった着物をミシンで縫い合わせ、1枚の布の状態に戻します。
そこからが洗い張り職人の出番。専用の洗剤とたわしで手洗いするときが、最も気を使う工程です。襟や袖口や裾などを重点的に洗う一方で、デリケートな刺繍部分などはこすらないように、細心の注意を払わなければなりません。縮緬(ちりめん)や紬(つむぎ)などの素材や汚れの状態に合わせて、使用するお湯の温度を微妙に調整することも必要です。
着物に使われる布には、縮みにくい生地と縮みやすい生地があります。前者は伸子(しんし)という針の付いた細い竹を何百本も並べた上に反物を張って干します。後者は蒸気を当てて(湯のし)反物をやわらかくしてからシワを伸ばして干します。仕上げに、糊付けしながら乾燥させると新品同様の光沢や風合いがよみがえります。
着物10枚分なら3~4日で仕上げるので、月に80〜90枚程度を洗っています。洗い張りしたあとの布を、「娘の寸法に合わせて同じ着物に仕立て直したい」「元の着物ではなく、羽織に仕立てたい」などの要望が可能かアバイスするのも大事な仕事なので、和裁の知識は不可欠です。
仕立て直した着物を着て、お客さまが見せに来てくれたときや、写真を送っていただいたときに、着物が命を吹き返した喜びを感じます。
どうしたら洗い張り職人になれるの?
学歴や年齢は問いません。着物のお直しや加工を施す悉皆屋(しっかいや)や和装クリーニング店などの、知識・技術を持った専門業者に就職します。修業期間は5年くらいが目安。