クーラーバックを大事そうに抱えてるあのひと、何してる?

2019.08.28 あのひと何してる?

臓器移植コーディネーター

病気や事故によって機能しなくなった臓器を、健康な臓器と交換して治す臓器移植。重い病気を抱えて臓器の移植を待つ人は、約1万4000人もいるんだ。写真は、摘出したばかりの臓器をパトライト付きの緊急自動車に乗せ、サイレンを鳴らしながら移植先の病院まで緊急搬送するところだよ。提供された臓器は両手で抱えて丁寧に扱うんだ。(写真提供/公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク[JOT])

移植を受ける人と提供する人、命の橋渡し役


心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球は、事故や病気で亡くなったあとに、その臓器を病気で苦しむ人に提供できます。臓器を提供する人(ドナー)と移植を受ける人(レシピエント)との橋渡しをするのが、臓器移植コーディネーターの仕事。学校などで、臓器提供の知識や理解を深める講演といった普及活動をしたり、病院の臓器提供に関わるスタッフに講義や実習を行うセミナーを開催することもあります。

病院から、「臓器提供についての話を聞きたいという方(ご家族)がいる」と連絡を受けると、昼夜問わず駆けつけます。家族が提供するかしないか、悔いのない選択ができるようにするためには、身内の突然の出来事に直面して混乱する家族に、臓器提供の説明をしなければいけません。家族の心情に配慮し、不快さや不安を与えない伝え方を工夫し、伝える時期などについても、病院スタッフや臓器移植コーディネーターが相談しながら、慎重に家族と向き合います。

臓器の提供が決まると、ドナーの検査や手術室の手配、摘出手術の立ち会いなど、医学的管理を医療スタッフと連携して行います。

臓器の提供後は、ドナー家族に、レシピエントの移植後の経過を報告します。また、ドナーの家族には厚生労働大臣からの感謝状も贈られますが、その後も自宅訪問や電話、手紙でやり取りをしながら、ドナー家族への支援を続けます。「一部でも生きていてほしい」「だれかの役に立つのなら」といった思いをかなえ、ドナー家族が少しでも笑顔をのぞかせたとき、臓器移植コーディネーターも救われた気持ちになります。

どうしたら臓器移植コーディネーターになれるの?


日本臓器移植ネットワークに就職します。医師、看護師、薬剤師など、医療従事者の国家資格を取得しているか、4年制大学を卒業していることが条件。都道府県が設置しJOTが委嘱している臓器移植コーディネーターもいますが、採用条件は都道府県で違います。

協力/公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク(JOT)

取材・文/内藤綾子