消防車をさわっているあのひと、何してる?

2026.09.30 あのひと何してる?

消防車の設計士がチェックをしている画像

消防車の設計士

災害のときに大活躍する消防車。みんながよく知っている「はしご車」や「ポンプ車」以外にも、実はたくさんの種類があることを知っているかな? 消防車の設計士は、消防隊員のオーダーに合わせて消防車のデザインや設計をしているんだ。人命救助のプロが乗る「救助工作車(きゅうじょこうさくしゃ)」の設計を例に、どんなお仕事かを紹介するよ。(写真提供/株式会社モリタ 撮影地はすべて兵庫県三田市)

消防隊員のオーダーに合わせて一台ずつ設計する


交通事故や自然災害まで幅広くカバーする、人命救助に特化した「救助工作車」。重い物を移動させるウインチやクレーン、夜間の救助活動を安全におこなうための大型の照明装置などを備えた消防車です。

消防車の画像

一台一台オーダーメイドで作られている救助工作車

救助工作車には、さまざまな場面に対応するための道具が積まれていて、その数は300点を超えることも。地域の特性によって必要な道具が異なるため、救助工作車は一台一台がオーダーメイド。そこで消防車の設計士の出番です。


最初の図面作成ではウインチやクレーンの位置、必要となる道具・部品を収納するレイアウトなど、細かい情報を整理してまとめます。図面ができたら、お客さんと打ち合わせをして、具体的な内容を決定します。

消防車の設計士が打ち合わせをしている画像

図面を見ながら打ち合わせをしているところ

消防車は一つの工場だけで完成するものではありません。改造を専門とする工場を3~5つ経由して土台を作ってから、自分たちの工場で電気配線や必要な装置などを取り付け、救助工作車として動けるように組み上げます。


消防車の組み立てのとき、機能や性能などをまとめた仕様書通りに作られているか、不具合はないか、必要な道具がちゃんと積んであるかなど、注文した消防の人から何度もチェックが入ります。消防隊員が計画を立てるところから納車まで、約2~3年かかります。


消防隊員からのオーダーはさまざまなものがあります。その中で共通しているのが「交通事故で使う救助器具は車両の左側に配置してほしい」という要望です。これは、車両の左側=歩道側が、安全な作業スペースとなるためです。

消防車の設計士が画面を見ている画像

デスクで救助工作車を設計しているところ

一方で地域ごとに異なる要望も寄せられます。例えば海や川が近くにある場合、潜水用のウエットスーツに着替えられる広い空間の確保や、ボートが積めるようにしてほしいという要望がありました。高速道路が近くにある地域では、大型トラックの事故に対応できる巨大な足場台を取り付けたことも。最近では、人手不足のため1台で救助も火災も対応したいという声を受けて、放水用のポンプと水タンクを積んだオールマイティーな救助工作車を作りました。


近年は、大きな災害が起きたときに遠方の被災地へ出向いて救助活動を援助する「緊急消防援助隊」という全国規模の協力・支援活動がおこなわれており、長距離移動で消防隊員たちが疲れないようにと、消防車内部の空間を大きく広げた車両も登場しています。時代や環境に合わせて消防車も道具もアップグレードしているのが特徴です。


消防車の設計士は、人の命を守る「消防隊員の命」がかかった製品を作っています。時間がないからといって妥協することが許されないのが、この仕事の大変なところであり、やりがいを感じる部分でもあります。

どうしたら消防車の設計士になれるの?


機械工学などの専門的な知識が必要ですが、それだけではありません。この仕事は全教科バランスよく学ぶ力が大切です。それぞれ別だと思っていた算数や社会、体育の授業が、実はつながっていたんだという発見ができると、勉強が楽しくなってくるかもしれません。知ることをおもしろがって、たくさん遊んで学んでください。

協力/株式会社モリタ

取材・文/伊東ししゃも