裁判官 のしごと

2025.01.14 紹介します○○のしごと

東京地裁民事部の裁判官、三井みのりさん
「勉強はじゅくや学校で。家ではゆっくり過ごして気持ちを切りかえていました」と語る三井みのりさん=2024年7月、東京地方裁判所
東京地裁民事部の裁判官、三井みのりさん

三井みのりさん

東京地方裁判所民事部(東京都千代田区)

争う双方の話を聞き、判断下す

裁判官は、うったえのあった事がらを法律にもとづいて、中立な立場から判断する仕事です。

裁判所であつかうトラブルは大きく分けると、刑事事件(犯罪の犯人だと疑われている人の有罪・無罪などを決める手続き)と民事事件(個人や企業の間の争いなどを解決する手続き)の2つです。三井さんは民事事件を担当しています。

「対立する当事者がそれぞれの主張を書面で裁判所に提出するので、双方の言い分を読んで、当事者が言いたいことは何かを理解し、整理することが普段の仕事です」

それぞれの言い分の食いちがいは、証拠を確認したり、当事者の話を聞いたりして、どちらの言い分を認めることができるのかを考えます。三井さんは3人の裁判官で判断する合議事件を担当。ほかの2人の裁判官と話し合い、結論を導き出します。

三井さんは現在、約60件の事件を受け持っています。1つの事件につき約1~2か月に1回は裁判があるため、1日3~4件の裁判が入ることも多いです。

自分の判断で影響を受ける人がいるため、重圧も感じます。乗り越えるコツは「議論をつくしたから大丈夫だと自信を持つこと」だと教えてくれました。

あゆみ

1996年
三重県生まれ
小学校時代
公立の小学校へ。友だちと外で遊ぶことや、本を読むことが好きでした
中学校時代
しっかり勉強ができると考え地元の国立中学校に進学しました。軟式テニス部に所属し文武両道にはげみました
高校時代
三重県立四日市高校に進学。必死に勉強に取り組みました
大学時代
名古屋大学法学部に入学。民法の授業で法律のおもしろさを感じました。裁判官や検察官、弁護士の話を聞く機会が多くあり、法律の仕事にあこがれるようになりました
ロースクール・司法修習生時代
大学卒業後、名古屋大学のロースクールで2年間学び、2021年9月、1度目の司法試験で合格。司法修習生の約1年間は裁判所や検察庁、弁護士事務所などを研修でまわり、裁判所での約4か月で、裁判官に魅力を感じました
2023年1月
東京地方裁判所の裁判官に
やりがいや苦労

議論つくしたからこその達成感

三井さんは3人の裁判官で議論をつくして出た結論を、判決として文章にまとめ、他の2人に確認してもらいます。話し合って追加や修正をし、完成した判決書が法廷で言いわたされます。「複雑な事件の判決を書いてそれを言いわたし、1つの事件を終わらせることにやりがいと達成感を感じます」

また、民事事件は判決をして解決するものだけでなく、双方がゆずり合って、話し合いで事件を終わらせる「和解」ができます。三井さんは双方が納得のいく和解で、事件に合った終わらせ方ができたときにもやりがいを感じるといいます。

向いている人は?

仕事上、文章を読んだり、書いたりすることが好きな人は向いているのではないでしょうか。また、判決をするためには、ベテランの裁判官とも同じ立場で話し合う必要があります。自分の頭で結論まで導く力や、自分の意見をしっかりと伝えて、相手から何か聞かれたときに答える力が大切だと思います。法律だけでなく、身近な規則やルールが何のためにあるのかということに関心を持ってみるのも、おもしろいかもしれません。

必要な道具は?

はば広い分野の主要な法令や、過去の裁判での判断などが書かれた本です。私は裁判官になってまだ1年半なので、必ず手元に持っています。〈写真は、『有斐閣判例六法Professional 令和6年版』(佐伯仁志・大村敦志・道垣内弘人・荒木尚志/編集代表、有斐閣、7040円)〉

東京地裁民事部の裁判官、三井みのりさんが仕事で使う『有斐閣判例六法』

おしごとあるある

弁護士などとの日程調整で、都合が悪いと「差しつかえです」と言うことが多いです。例えば「〇月〇日の午前中はいかがですか」「差しつかえです」「ではちがう日にします」といった使い方です。

最近の民事裁判は法廷で行うものばかりではなく、むしろウェブ会議が主流になりつつあります。代理人とウェブ会議で議論を進め、につまってきた段階で法廷で表情を見ながら当事者や関係者の話を聞くこともあります。

2024.9.30付 朝日小学生新聞
構成・大井朝加

毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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