スキーインストラクター
ゲレンデ(スキーの練習場)で、美しいフォームで滑るスキーヤー(スキーをする人)を見かけたことはあるかな? その中には、スキーを教える「スキーインストラクター」がいるよ。写真は、長野県白馬村のスキー場で、インストラクターが滑り方のポイントを説明している様子。スキーを安全に楽しむためには、正しい技術が必要なんだ。(写真提供/ZERO SKI ACADEMY 撮影地はいずれも長野県白馬村)
雪質や天候を読み解き、安全と技術を教える専門家
スキーインストラクターは、初心者から上級者まで、それぞれのレベルに合わせてスキーの技術を教えます。お客さんの安全を第一に考え、楽しく上手に滑ることができるよう指導します。
スキーのレッスンがある日は、朝スキー場に行き、その日の雪の状態を確認するところから始まります。ウォーミングアップを行ったら、お客さんとゲレンデで待ち合わせ。マンツーマンで教える「プライベートレッスン」や、複数の人に教える「グループレッスン」があり、海外のお客さんへレッスンすることもあります。
レッスンでは、スキーの基本的な動きを教えるだけでなく、お客さんの体の使い方も細かくチェック。体の構造や動きを研究する「機能解剖学」や「運動力学」を勉強するインストラクターもいる
レッスンをする際、インストラクターが最も大切にしているのは、安全管理です。お客さんの体調や技術レベルを細かく確認し、天候や雪質(ゆきしつ=積もった雪の性質。密度が小さくやわらかい雪から、氷の板のようにかたいものまである)に合わせて適切な場所やプログラムを考えます。
例えば、午前中は誰も滑っていない良好な状態のスキー場を使って、大きなターンの練習、午後になって斜面が荒れてきたら、技術確認のようなゆっくりとした練習に切り替えるなど、状況に応じて内容を変えていきます。また、スキー場が混雑しているときは、ほかのスキーヤーに近づきすぎないなどお客さんに安全に滑るためのルールを伝えたり、滑るルートを変更したりする配慮(はいりょ)も必要です。
マイナス10度を下回る日もある極寒(ごっかん)の地での仕事は、決して楽ではありません。特に大変なのが、お客さんのスキーの上達度合いを記録するためのビデオ撮影です。手袋を外し、指先が凍えそうになりながらビデオカメラを持って撮影します。また、10人前後のグループレッスンでは、全員の安全に気を配りながら、一人一人の技術レベルに合わせた指導を行う難しさもあります。
起伏(きふく)のあるコブ斜面を滑っている様子。インストラクターには、スキー技術のうまさと進化を競う「全日本スキー技術選手権大会」の選手もいる
しかし、人の成長に携(たずさ)われ、喜びを分かち合えること、「滑れるようになった!」というお客さんの笑顔に出会えることが、この仕事のやりがいだといいます。開放感のある自然の中で働ける点も魅力です。
インストラクターは、12月〜3月頃の冬のシーズン中はスキー場で指導を行いますが、オフシーズンとなる4月〜11月頃の過ごし方はそれぞれ異なります。特殊なスノーマットを敷きつめて、夏でもスキーを楽しめる「サマーゲレンデ」でレッスンをするなど、年間を通してインストラクターの仕事をする人もいれば、農業やフィットネスジムのインストラクターをする人もいるなど、それぞれの道を見つけています。
また、日本のスキー界には、「全日本スキー連盟(SAJ)」という団体があり、指導技術を競う選考会が2年に1度行われます。この選考会で勝ち抜き、選ばれた人が2年間名乗ることができる最高峰(さいこうほう)の肩書きに「ナショナルデモンストレーター」があります。全国で、わずか28人(男子20人、女子8人)しかいないスペシャリストで、指導者の育成も担っています。このような高度な技術を持つインストラクターの存在が、日本のスキー界全体の技術レベルの向上に貢献(こうけん)しているのです。
どうしたらスキーインストラクターになれるの?
まずは、自分自身がスキーを楽しむこと、スクールなどで教わりながら経験を積み、技術を身につけることが大切です。インストラクターになるには、スキースクールに所属するか、全日本スキー連盟が認定する指導資格を取得するかのどちらかが必要です。現場に出てからは、経験豊富な先輩から安全管理や指導方法について学び、技術を磨いていきます。