ボルダリングのルートセッター
人工壁を登るスポーツクライミング。その壁を作っているのが、ルートセッターだよ。写真は、スポーツクライミングの一種である「ボルダリング」の壁を設営している様子。高さ4.5mほどの壁に10個前後のホールド(突起物)を取り付けるんだって。クライマーのワクワクを盛り上げる壁は、どのように考えて作られているんだろう。(写真提供/国際ルートセッター 平松幸祐さん)
「登れそうで登れない」挑戦心をかきたてる壁を作る
初心者からプロまで、クライマーが楽しんで登るためには、難易度の違うさまざまなルート(コース)が必要です。そのルートを考え、大きさや形状の違うホールドをハンドドリルで固定し、壁に設営するのがルートセッターの仕事です。
ルートに決まった形はないので、バリエーションは無限です。ホールド間の距離が遠い、ホールドがいびつな形状でつかみにくいといったことで難易度を調整。小さなホールドに跳び乗るようなバランス感覚を求めるもの、遠くのホールドに乗る体幹の筋力を問うものなど、さまざまなコンセプト(考え方)をもとにルートを考えます。
ホールドは形や色、素材などがそれぞれ異なって特徴的。こだわるあまり、自分で使いたいホールドを自らデザインするルートセッターもいます。取り付けは1㎜のズレや1度の傾きの違いで登れるかどうかが決まるので、繊細さが要求される難しい作業です。
大きいホールドは80㎏超。2人がかりで運んで取り付ける
ルート作りは、複数のルートセッターがチームで行うのが一般的です。設営後、必ず数名が登ってチェック(試登)。安全面はもちろん、横に跳んだとき体勢の悪い着地にならないか、難易度に沿っているかなど意見を出し合いながら修正して完成します。
どのレベルにもちょうどよい難易度を与え、「登れそうで登れない」と思ってもらえる挑戦心をかきたてる壁を作ることが重要。「またトライしたい」という気持ちを引き出すために、クライマーが何度もホールドのつかみ方や動き方を工夫する面白さを感じ、完登したときに上達を実感できるルートづくりを心がけています。
ボルダリングジムのルートを替えるときは、2~3日閉店して行う大作業に
どうしたらルートセッターになれるの?
クライミングの技術が必要です。そのうえで、クライミングジムなどでルート作りの手伝いをしながら経験を積むのが一般的。国内では、日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)が資格を発行しており、公認されると国内の公式大会でルート作りができます。