越後屋美和さん
東京ワイナリー(東京都練馬区)代表東京の土と水と仲間で育む
ワインづくりは時期によって仕事が変わります。最もいそがしいのは、仕こみをする8月から11月にかけて。原料のブドウは地元の東京産に加えて各地からも取り寄せています。実り具合によるので、いつ入荷するかわかりません。
届いたブドウはくきを取って、発酵に必要な酵母が増えるように手でおしてつぶします。2、3週間発酵させてから機械でしぼり、タンクで熟成させます。
完成すると年末まで発送作業や販売イベントがあります。1~3月はリンゴのお酒を仕こみます。2月からは地元の農家や自分の畑で、ブドウの手入れを始めます。週末は、地元野菜を使った料理の提供もしています。
越後屋さんは約8年前に、都内初のワイナリー(ワイン醸造所)をつくりました。「ワインは農産物。同じ土、同じ水でつくる地元の野菜とワインは相性がいい。東京にも農業があると知ってほしかった」と言います。
会社は1人ですが、仲間はたくさんいます。仕こみの時期はSNSで呼びかけると、子どもからお年寄りまでたくさんの人が手伝いにきます。ブドウ畑も区民の参加で作りました。「地域のみんなでワインをつくっていきたいです」
小さいころから長い休みを新潟の祖父母の家で過ごすことが多く、米や野菜を育てるのを見てきました。1人で本を読むのが好きで、得意だったのは算数と理科。中学校までは、浮かないていどに周りに合わせて、言われたことを素直にするタイプでした。
高校で気の合う友人にめぐまれ、言いたいことを言って、やりたいことをやろうと、変わりました。環境問題に興味があり、自分では何ができるかを考えて大学の農学部に進みました。
一度まったくちがう分野の仕事につき、やはり農業や食の仕事がしたいと気づきました。
- 1976年
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新潟県で生まれ、神奈川県横浜市で育つ
- 1992年
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神奈川県立横浜翠嵐高校に進学
- 1996年
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玉川大学農学部(東京都町田市)に進学。在学中にカナダに留学する
- 2001年
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環境コンサルティング会社で約3年働く。その後、野菜の仲おろし、営業や事務などの仕事をする
- 2014年
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「東京ワイナリー」を立ち上げる
都会の住宅地にも農業残したい
市場で仕事をしていたときに、練馬区の野菜に出合いました。「東京にもこれだけ手をかけて野菜を育てる農家がある。住宅が広がる中でも畑を残していきたい」と起業しました。
お酒をつくるには免許がいるほか、さまざまな条件があります。思い立ってから2年の間に資格を取り、技術を身につけ、資金と場所を用意し、ブドウの仕入れ先をさがしました。「やることが多くて心配するひまもありませんでした」と言います。
「楽しく飲んで人と人がつながるのがうれしい。時間が足りないのが今の悩みです」
2022.1.24付 朝日小学生新聞
構成:中田美和子
撮影:近藤理恵
イラスト:たなかさゆり
毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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