地域で暮らすひとびとの笑顔と未来をつくる、地方公務員の仕事

2021.05.14 おしごと発見!

おしごと発見!

地方公務員

地方公務員とは、県庁や市役所、区役所などで、その地域とそこに暮らすひとびとを支える仕事です。教育、産業、文化、環境、街づくりにいたるまで、仕事内容は幅広く、職種も数多くあり、専門性が問われる仕事もあります。地域の方々との距離が近く、地域貢献というやりがいを感じられる仕事です。[取材:神奈川県庁 増田勇樹子さん]

地域のひとびとによりよい暮らしを届ける


地方公務員は、その地域に住むひとびとの声を聞いて、暮らしやすい街をつくる職業です。役所に勤める職員だけでなく、公立学校の先生や図書館の職員、警察官なども地方公務員にあたります。県庁職員として、神奈川県庁に勤めて15年になる増田さんは現在、スポーツを通じて県民の暮らしを豊かにすることを目的としたスポーツ局に所属しています。「学生時代に運動部のマネージャーをしていた経験から、スポーツをはじめ、地域を下支えできるような仕事をしたいと考えて、民間企業から神奈川県庁に転職しました」とのこと。

県庁にはスポーツ局以外にも幅広い分野の仕事があり、そのなかでさまざまな部署を経験します。増田さん自身も入庁してからこれまでに、中小企業の金融支援、教育委員会、財政課など多くの仕事にたずさわってきました。そして5年ほど前に、念願のスポーツに関わる部署へ。現在は東京五輪・パラリンピックに出場する神奈川県ゆかりの選手の紹介や、パラリンピック聖火リレーのセレモニー、事前キャンプで訪れる海外選手と地域の交流サポート、街中を飾るフラッグの設置など、東京2020組織委員会とやりとりしながら、開催を盛り上げる仕事に取り組んでいます。

街に暮らすひとたちの声を聞き、気持ちに寄りそう


民間企業で働くことと県庁で働くことのちがいについて聞くと、「おあずかりした大切な税金をどう活用するか。そこが肝心です」と話します。これは県庁がやるべき仕事かどうか、本当に神奈川県民が求めているか、公平性はあるか、そういった判断基準がいつも頭の中にあるとのこと。「私たちの仕事は、神奈川県で暮らすひと、働くひとの生活と未来に大きな影響力を持っています。それはさまざまな部署での経験を通じて、心の底から感じました。だからこそ、県民の方たちの声に耳をかたむけて、感じとって、仕事につなげたい」。

たとえばスポーツイベントを開催するときは、県民の声を聞くいちばんのチャンスだそうです。「イベント後に参加者からアンケートをとり、出演者の感想も聞きます」と話します。長く県庁に勤めている増田さんでも、まだまだ知らないことはたくさんあると言います。

「県民の方と接していると、発見や気づきがたくさんあります。公務員として、県庁らしく手がたく仕事をすることも大切ですが、好奇心や興味をもって、変化する世の中に合わせて変わっていくことも大事なことです」。行政機関で働く広い視野と、生活する一人ひとりを想う気持ち、その両方が必要とされる仕事であることが伝わってきます。

大切なことは県民が笑顔になれるかどうか


これまでに手がけたスポーツ局の仕事では、神奈川県横浜市が会場のひとつになり、近年話題となったラグビーワールドカップ2019が印象的だったと語ります。「当時ラグビーワールドカップは、日本ではそれほど知られておらず、特に女性や若い世代には馴染(なじ)みのうすいスポーツ大会でした。そこで、若手女性職員に集まってもらって、どうすればラグビーに興味がもてるか意見を出しました。

その結果、大学と連携してラグビーウェアでファッションショーを開催したり、現役ラグビー選手の解説付きの観戦バスツアーを開催したりして、大好評でした」。そのかいもあって、本番のワールドカップには国内外からたくさんの人が来場。「国境を越えて、みなさんがラグビーを楽しんでいる姿に感動しました。これぞスポーツの力だなと」。

現在の東京五輪・パラリンピックに関する仕事内容について聞くと、「多くのひとが関わるプロジェクトですから、それぞれの意見や想いを聞いてまとめる力が問われます。たとえば東京2020組織委員会の意向があり、国の方向性があり、県の希望もある。けれど、県民の方々にとって魅力的かどうかが、なによりも大切。いつも『スポーツを楽しむひとを増やす』という目的を果たすために考えます」。地域の人々やイベント観戦に訪れたひとが笑顔になれるかどうか。その想いが、増田さんの原動力になっています。

地方公務員(県庁職員)になるには?


各自治体によって行われる地方公務員試験に合格し、採用となります。試験に向けて、独学で勉強するほかに、公務員予備校に通うという方法もあります。自治体にもよりますが、社会一般や英語などの教養から、行政学、経済学、憲法などの専門知識など出題範囲が幅広く、民間企業の入社試験とは異なることが多いです。新卒、社会人経験者ともに受験できますが、自治体ごとに年齢制限がちがうので確認が必要です。

「私のように地元の自治体で働くことをめざしている方なら、試験勉強はもちろん大事ですが、住んでいる街のことをもっと知ること、まだ知らない場所に行ってみることもおすすめします。公務員として、その地域をよく知っていること、地域に愛着があることは強みになりますし、自信にもなるはずです。私はいまも、いろいろな神奈川の魅力を見つけるのが好きです」。自分ならこの街をどんな風によくしていきたいか。そんな視点や想いが、地方公務員をめざす上で何よりも大切になるでしょう。


※2021年3月現在

※取材・撮影は感染対策を施した上で、マスクを外した状態で行っています。

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