白くにごった水の中で木の板を揺らしているあのひと、何してる?

2023.07.31 あのひと何してる?

紙漉き職人(かみすきしょくにん)

日本古来の製法で作られている紙を「和紙」というよ。写真にあるように水の中の木の繊維を漉いて造る和紙は、襖(ふすま)や障子(しょうじ)、提灯(ちょうちん)の紙などいろいろな場面で使われているね。福井県の「越前和紙」、高知県の「土佐和紙」、そして岐阜県の「美濃和紙」が日本三大和紙といわれているよ。日本の伝統文化でもある手漉き和紙は、どうやって作られているんだろう?(写真提供/美濃和紙紙漉き職人 松尾友紀さん)

伝統的な技術を使って1枚ずつ手作業で生み出す「和紙」


紙漉き職人の仕事は、木の皮から紙の原料を作り、伝統的な技法で1枚ずつ手作業で和紙を作ることです。原料は、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった樹木などの靭皮(じんぴ)と呼ばれる、外皮の下にある柔らかな繊維を使います。


和紙の製造は大きく分けて13工程あります。同じ「楮」でも産地によって繊維が異なるため、注文に応じて使い分けて、作りながら違いを出しています。工程は原料を仕入れるところから始まります。蒸して、はいだ樹皮は乾燥させて保存します。作る直前に水にさらし、アクを取り除き、柔らかくなるまで煮ます。さらに不純物を取り除き、槌(つち)や機械で1本ずつの繊維にほぐす「叩解」(こうかい。たたくこと)ののち、紙を漉いていきます。多くの工程があるため、完成まで1カ月以上かかることもあります。


特に、美濃和紙は「十文字漉き(じゅうもんじすき)」と呼ばれる特殊な技法を用いて作られます。他の地方では紙を漉く道具である簀桁(すけた)を縦のみに動かしますが、美濃和紙では縦横と繰り返し動かします。こうすることで、繊維が縦横に絡み合い、薄くても非常に強い紙ができるのです。

紙の品質を左右する「ちり取り」は、水の流れる場所で行う。アク抜きのすんだ皮から不要な部分を取り除く作業。どの工程よりも精密さが求められる

手間暇かけて作った紙を1枚ずつ板に付けて、「紙干し」。晴れた日に乾かすとパリッとした音が心地よい。ようやく紙が出来上がる

これまで日本では、和傘や提灯、障子紙、謄写版原紙(とうしゃばんげんし)*、画材や文化財修復紙などの伝統的な使い方から、室内装飾やアクセサリーといった新しい活用方法まで、和紙は幅広く利用されています。


紙自体は目立つものではありませんが、文化や芸術を縁の下から支えているのが手漉き和紙です。


謄写版原紙*とは:和紙にロウを塗って加工した紙。鉄筆という先端が鉄でできたペンで文字や絵をかき、インクとローラーで印刷をした「ガリ版」の原紙。

どうしたら和紙職人になれるの?


和紙職人になるためには、特別な学歴や年齢制限はありません。しかし、体力や筋力が必要な仕事です。また、製紙は科学でもあり、観察力や分析力も求められます。自分で営業し販売するためのコミュニケーション力、そして何よりも自分だけの紙を作り出す個性が必要です。

協力/美濃和紙 紙漉き職人 松尾友紀さん

取材・文/片岡由衣