海に潜って貝を採っているあのひと、何してる?

2022.05.30 あのひと何してる?

海女(あま)

海に潜るのはみんな好きかな? 海へ潜っていき、アワビやサザエ、ウニなどの貝や海藻などを採る女性の漁師を「海女(あま)」と言うよ。もともとは女性のみの仕事だったけれど、地域によっては男性の「海士(あま)」もいるんだ。素潜り漁は縄文時代から行われていた痕跡があり、『万葉集』には海女について歌った歌もあるなど、長い歴史があるよ。(写真提供/鳥羽市役所農水商工課水産係)

自然とともに生きる「海女」は日本文化の一つ


海女の漁は「50秒の勝負」と言われ、自分の呼吸のみで水深5〜8mの深さまで潜っていき海産物を採ります。季節によって採れるものはさまざまで、夏場はアワビ、サザエ、ウニ、イワガキなど、冬場は、サザエ、ナマコなど、春は、ワカメ、ヒジキなどが代表的です。


水圧や低水温など、体への負担の大きな仕事なので、漁の前には体調を整えることが大事です。「海女小屋」と呼ばれる場所で体を温め、道具の準備やイメージトレーニングをします。

海女小屋は海女たちのコミュニケーションの場でもある

海女は、船の上から海に浮かぶブイなどの流れから、潮の流れを読み、潜る場所を選びます。海の中では海底の石が重なった所や岩場のすき間などを見て、獲物の有無を判断。体力だけではなく、集中力や判断力も必要です。


海産物の量は年々減っています。資源保護のために、小さいものは漁獲しない、地域ごとに漁に出る日数を制限するなどの決まりを守りながら漁をしています。高級な海産物であるアワビは、傷があると価格が下がるため、漁のあとは汚れを丁寧に取り除いてからすべて漁協へ出荷します。


毒を持っている魚がいたり、天候により何日も出漁できなかったりする、自然相手ゆえの大変さもある一方で、自分の技術次第で収入を増やすことができ、成果が見える仕事でもあります。


全国で海女の人数が特に多い三重県の鳥羽志摩地域では、1949年には6000名以上もの海女がいましたが、2017年には660名にまで減っています。自然とともに生きる「海女」は日本文化の一つです。2017年には「鳥羽・志摩の海女漁の技術」が、国の重要無形民俗文化財に指定されるなど、海女文化を守ろうとする動きが盛んで、文化や自然環境保護の観点からも注目されています。

30〜80代の人が活躍。ベテラン海女さんたちの身体能力の高さは周囲の人々も認めるところ

どうしたら海女になれるの?


海女になるためには、学歴や年齢などの制限はなく「漁業権」が必要です。かつては地元の人しか海女にはなれませんでしたが、一部の地域では他の地域からの後継者を受け入れています。

協力/鳥羽市役所農水商工課水産係

取材・文/片岡由衣