高いビルの外側からゴンドラに乗っているあのひと、何してる?

2022.05.10 あのひと何してる?

高層ビルの窓ガラス清掃員(こうそうビルのまどガラスせいそういん)

眼下の建物がミニチュアに見える写真のビルは、大阪にある「あべのハルカス」。60階建て、高さ300mの日本一高いこのビルの窓は、窓ガラス清掃員の手で1枚ずつ磨かれているんだ。作業をする1~2カ月前から、綿密な段取りを計画して現場へ臨む清掃員は特殊な専門職。高所での作業だけど、強い責任感を胸に、集中して取り組めば怖くないんだって。(写真提供/近鉄不動産株式会社)

地上の2倍の風にあおられながら、街の美観にも貢献


窓ガラス清掃員は、安全点検はもちろん、作業の前に身の回りのチェックを入念に行います。高所からどんな小さな物を落としても地上では大事故になるため、時計やアクセサリーを外し、作業道具はすべて作業着にヒモでつなぎます。また、自身も落下しないように、体をゴンドラに固定するハーネスを着用します。

窓ガラスやビルの構造を頭に入れながら、作業をすることが大事。また、常に天気予報をチェックし、天気の変化にも気を配る

あべのハルカスでは、サンタクロースやトナカイに扮して作業し、訪れる人たちを楽しませることも

ヘルメットを装着してゴンドラへ乗り込み、作業を開始。ウォッシャーと、水気を拭き取るワイパーを滑らかに動かして1枚ずつ丁寧に汚れを落とします。1枚の窓ガラスの大きさは担当するビルによって異なるうえ、同じビルでもフロアによって違います。あべのハルカスの展望台(60階)の場合、横は約1.5m×縦は約5.0mという見上げる大きさ。あべのハルカス全体では、約1万5000枚あり、4~5名で清掃しても半年かかります。

高層ビルの窓ガラスの主な汚れは、砂、花粉、黄砂、車の排気ガス、鳥のフンなどです。放置すると、日光を浴びて酸焼け(ガラスの表面に付着した水分がアルカリ性に変化し、空気中の酸性物質などと化学反応を起こす)して、白くなる(白化現象)可能性があるので、見落とさないように丁寧に落とします。

ゴンドラ内は日光や風を遮るものがないので、厳しい環境です。地上と高所では、気温が3度ほど違い、約2倍の風がビュービュー吹いてゴンドラが揺れる中での作業も珍しくありません。また、ゴンドラの昇降に時間がかかるため作業が終わるまで地上に戻らず、ゴンドラ内で休憩します。


緊張感あふれる現場ですが、高層ビルの窓ガラスをきれいにすることで、ビルは美観が保たれ、寿命も長くなります。窓がピカピカになった高層ビルを地上から見上げると、美しい街づくりにも貢献していることを実感します。

どうしたら高層ビルの窓ガラス清掃員になれるの?


特別な学歴や資格は必要ありません。オフィスビルの清掃会社や管理会社などに就職します。ただし、地上2m以上の高所作業をするのは18歳以上と法律で決められています。

協力/近鉄不動産株式会社

取材・文/内藤綾子