マイクで警告をしているあのひと、何してる?

2022.01.31 あのひと何してる?

海上保安庁の国際捜査官(かいじょうほあんちょうのこくさいそうさかん)

治安の確保、海難救助,海洋環境の保全などの業務を行う海上保安官の職種のひとつが、国際捜査官だ。外国人を相手に犯罪捜査を行うスペシャリストだよ。写真は、不審な外国船に向けて、日本の海域で操業しないようにマイクで警告をしているところ。2020年には、大和堆(やまとたい・能登半島沖にある日本海の漁場)周辺海域に接近しようとする107隻の中国漁船に対して退去警告をしたんだって。日本の海上犯罪を未然に防ぐ使命を持った、責任の重い仕事だ。(写真提供/海上保安庁)

外国漁船による違法操業や密輸・密航から日本を守る


国際捜査官は、外国語を駆使して外国人犯罪の捜査をしています。日本海中央部の「大和堆」は、イカやカニなどの日本海有数の漁場となっていて、北朝鮮漁船や中国漁船などが違法操業を行うため、外国語を駆使して日本の海域から退去させています。また、近年の密輸事犯は、暴力団等や外国人の組織的な関与が見受けられ、国際的な組織犯罪が行われているものと考えられることから、中国語、ロシア語、韓国語などを使い、通訳や翻訳を担当するだけでなく、実際の取り調べや立ち入り検査も行います。


外国人犯罪といっても、以下のようにさまざまな例があります。
・外国船の乗組員や乗客が、覚醒剤などの不正薬物や拳銃などを持ち込む密輸
・外国人が船に隠れて、許可を受けずに日本へ上陸しようとする密航
・日本人が被害者となる船内での盗みや傷害、殺人などの刑事事件
・日本の海域でルールに従わない悪質な外国漁船による違法操業


その他、傷病者の救助、災害や航行する船で発生する事故に対応することもあります。

警告に従わない外国漁船に放水して退去させる巡視船

海上での事件に出動するときには、救命胴衣はもちろん、ヘルメットやプロテクターを装着。武器を所持した犯人には、制圧術(逮捕術)や警棒、拳銃といった武器を用いて適切に対応します。


外国船がふだん入港しない小さな漁港に、多くの外国人がいて不審な様子があるなど地元の人から連絡があれば、ただちに現場へ。荷物に不正薬物や拳銃などがあれば現行犯として逮捕し、捜査を開始します。


悪いことをして本当のことを話したがらない人物から外国語で事情聴取をするのは、文化や考え方が日本と異なることもあり、至難の業です。動揺する気持ちは目の動きなどに現れることがあるので、相手の言葉だけでなく表情なども注意深く観察します。相手から本当の話を聞き出せたときは、使命を果たせた充実感でいっぱいになります。

どうしたら国際捜査官になれるの?


海上保安大学校や海上保安学校等を卒業して海上保安官になる必要があります。国際捜査官は海上保安官の中から、適性や希望に応じて選抜されます。国際捜査官は、国家公務員です。

協力/海上保安庁

取材・文/内藤綾子