いろんな体験をしてみたい人にうってつけの職業とは

2019.07.01 おしごと映画

しごとについての質問

「してみたい仕事はたくさんあるけど、業種がバラバラ。全部できるのものは何でしょうか?」(13歳・男子)

<答えてくれる人>中山治美さん(なかやまはるみ)

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

ズバリ、トム・クルーズや植村直己さんになりましょう


『俳優 亀岡拓次』
発売元・販売元:アミューズソフト
価格:DVD 3800円(税別)

『植村直己物語』
発売元・販売元:アミューズソフト
価格:DVD 4800円(税別)

ある時は海軍のパイロット、ある時はスポーツ・エージェント、またある時はロック・スターetc……。トム・クルーズほど様々な職業を経験している人はいません。日本なら、木村拓哉も結構な職歴を経ています。つまり、俳優になる―ということですね。
そんなの疑似体験じゃないか!と、思うでしょう。いやいや、俳優という仕事を侮ってはいけません。フィクションとはいえ本物以上に本物らしく、時にはその道のトップに見えるレベルまで到達するには、どれだけの研究や訓練を必要とすることか。兵士を演じるために1、2カ月軍隊に入るのは当たり前。トムなんて映画『宇宙戦争』でクレーンのオペレーター役を演じるために、実際に街で行われていた工事現場で働いたこともあるんですよ。スターなのに!です。
その俳優の日常を描いた映画が『俳優 亀岡拓次』です。主人公は脇役なので、演じる役は泥棒やホームレス、あるいは“その他大勢”ですが、それはそれでレアな体験です。でも役の大小の差はあれど、俳優の生活はそう変わりはありません。日々、指定された場所へ赴き、撮影準備ができるまで待機して、いざ、カメラの前に立つと架空の人物を“生きる”。適応能力が求められる仕事ですね。そして本作では、劇中で七変化を披露する亀岡役の、安田顕という俳優そのものの魅力を感じると思います。多くの俳優が口にすることですが、特徴ある役よりも、普通の人を演じる方が難しいそうです。
もう一つあります。冒険家になりましょう。
植村直己さんをご存じでしょうか? 1970年に世界初の5大陸最高峰(マッキンリー、アコンカグア、エベレスト、キリマンジャロ、モンブラン)登頂者となり、78年には北極点に犬ぞりで単独到達した国民栄誉賞受賞者です。84年に残念ながら厳冬期のマッキンリーで登頂後に消息不明となりましたが、通常、チームを組んで挑むところを単独で決行した偉人です。
この方は冒険家の中でも特に慎重な方で、南極横断3000kmを計画したときには、ちょうど同距離の日本列島縦断を徒歩で体感したり、北極点単独犬ぞり行の前には、現地の人の家に居候して犬ぞりの練習や極地に暮らす人たちの生活術を習得するために約5カ月も費やしています。心身の強さはもちろん知恵と経験、さらには気象学や地理学、通信技術など極地で一人で生きていくためのあらゆる技術を身につけなければなりません。当時はスマホなんてありませんから、頼れるのは己自身です。
これで収入を得られるの?と、思ったでしょう。
そこです! 重要なのは。冒険の費用を得るために、植村さんは行く先々でアルバイトをしたり、執筆活動で収入を得たり、さらには企画書を持参し、スポンサー企業探しに奔走しました。今でいうクラウドファンディングで資金を得たこともあったのですよ。冒険家って自分の好きなことを勝手に行っているだけと誤解されがちですが、だからこその苦労も相当あったと思います。
これはどんな職種にも言えると思います。自分の夢や野望を仕事にできるか否かは、自己プロデュース能力にかかっていると。あなたもいっそ既存の職種に自分を当てはめるのではなく、“全部できる仕事”を生み出してみては? 新たな未来を切り開いちゃってください。