聞いたこともない国を飛び回るお仕事。いったい何してるの?

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

商社で働くパパ。出張で聞いたことのない国に行くらしいけど、何しに行くの?(12歳・男子)

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

世界のあらゆる場所で仕事が生まれ、製品が開発されているのです

『海賊とよばれた男』
発売元:ソニー・ミュージックマーケティング
価格:Blu-ray 4500円(税別)
©2016「海賊とよばれた男」製作委員会 ©百田尚樹/講談社

『南極料理人』
発売元・販売元:バンダイナムコアーツ
価格:Blu-ray 3800円(税別)/DVD 3800円(税別)
©2009『南極料理⼈』製作委員会

未知なる国がまだあるとは! 世界は本当に広いですね。グアテマラならコーヒー豆の買い付け? ミャンマーなら日本も参加している鉄道整備事業? とか、国名が分かると想像できるのですが……。

まず、 “商社”からひも解いてみましょう。商社は物資などを輸出入する際の仲介や、事業投資などが主な仕事です。大きく2つに区分され、食品から宇宙開発まで幅広く扱う総合商社、分野に特化した専門商社があります。また近年は、地方経済活性化を目的に、観光資源など地域を丸ごと国内外に発信する「地域商社」というのも存在します。いずれにしても取引先はワールドワイド。お父さんは世界を股にかけて働く男なのですよ。カッコイイ〜。

具体例を見てみましょう。岡田准一主演『海賊とよばれた男』は、明治時代に石油の将来性にいち早く目をつけ、石油卸売業者から一大企業へと成長させた実在の人物をモデルにした一代記です。

登場する国岡商店は、燃料やエネルギーを扱う専門商社となります。九州・門司で起業し、数年後には日本の国策企業だった南満州鉄道への売り込みに成功して中国大陸にも販路を拡大しました。

戦後は敗戦の影響などで苦労するも、欧米メジャー企業がコントロールしていた石油市場に切り込み、産油国であるイランからの直接取引に成功します。ただ、その手法がよく言えば大胆、悪く言えば強引だったので “海賊”というあだ名になったのでしょう。でも、なにせ相手は巨大ビジネスである石油業界を牛耳っていた魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちなので、煙たがられるくらいの攻めの姿勢が必要だったのでは? 世界を相手に仕事をすることの厳しさが伝わってきます。

この“世界”には、地球の極地・南極も含まれます。堺雅人主演『南極料理人』は、調理担当者の視点から、陸の孤島・ドームふじ観測拠点(現・基地)で越冬する南極観測隊員の生活をコミカルに描いた作品です。観測隊員は国立極地研究所に所属する研究者ばかりかと思いきや、民間企業から派遣された車両担当者や通信担当者も。堺演じる海上保安庁から派遣された西村淳のように、生活面を支える調理担当者もおり、実にバラエティー豊か。

実際に飛島建設、通信会社のKDDI、関電工などが定期的に社員を観測隊員として派遣しています。そうそう! 教員南極派遣プログラムも実施されており、先生が現地から南極授業を行っているんですよ。

そして商社もサポートしています。例えば宇宙・航空機ビジネスの専門商社・丸紅エアロスペースは、南極観測支援ヘリコプターCH-101を納入しました。繊維の専門商社・東洋羽毛工業は日本山岳会と共同開発した防寒用具に定評があり、第1次南極観測隊の頃から羽毛服を納めています。それらが南極で使用された体験が製造現場にフィードバックされ、品質の向上へとつながっているのですね。

ちなみに南極は南極条約により領有権の主張は認められておらず、国ではありません。
言ってみれば世界のみんなで守るべき大陸といってもいいでしょう。

それにしても “聞いたことのない国”が気になります。ぜひ直接、どんな仕事をしているのか聞いてみては? パパさんを通して、広い世界をのぞいてみるチャンス!!